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2024/03/17[院長コラム]春遠からじ
こんにちは
窓の外では暖かく強い風が桃の花を散らせています。3月の終盤に入ろうとしている週末です。暑さ寒さも彼岸までと言いますが、今週迎えるお彼岸は寒さのぶり返しがあるようです。皆さんご自愛くださいね。
私はスタディーグループや海外も含めた学会に複数所属していましたが、昨年65歳を迎えるにあたり断捨離の終活の一環としていくつかの学会やグループを退会しました。実に毎年の年会費も数が増えると馬鹿にならない額になってしまうのも事実なのです。 その中で毎年のプレゼンが義務である最も身近でベースとなっているグループ「PDS研究会」と「歯科臨床十人会」のプレゼンがついこの間し終えました。夏休みの宿題を終えた子供ではないですがとりあえず肩の荷が降りたと同時に来年度のプレゼンのテーマをまた背負ったわけです。
歯科臨床のプレゼンとは勿論日々の臨床(治療)の積み重ねではあるのですが、その材料となる症例写真やケースを集めることから始まってある意味プレゼン用の臨床を造る手間、そして予め時間を用意しなければならず、漫然と日々の臨床をこなしていれば出来るものでは無いので結構なプレシャーとなります。若い頃は嬉々としてそのプレッシャーを楽しんだり、第三者に観せて恥ずかしくないプレゼンを作るために歯科臨床に手間暇を掛け自分の臨床を高めることに喜びや満足感を得ていました。が、最近歳のせいで其の様な熱量が下がっている事を自戒しております。
引き出しに放り込んである沢山のUSBとパワーポイントのプレゼンを見直すと自分でも忘れていたようなケースがたくさん出てきます。現時点でももちろん引き続き診させていただいている患者さんのケースも多くありますが、一方でこれだけ手をかけて素晴らしい治りになっている(その時点では)患者さんでメインテナンスにいらっしゃらなくなっている方も大勢いらっしゃいます。遠方で在宅になってしまわれた方、認知症になられた方、転居をされた方、はたまた近隣に居られるはずなのに何故か通われなくなってしまった方。私は今まで口腔一単位で原因となる環境改善を図るべくお口の中全体の状態をあらかじめ患者さんにお伝えし、了解を得た上で保険・自費を問わずお口の中全体を治療対象とすることが多いので、そういった方々が他院での治療再介入や新たな疾病による治療をどのように受けているのかとても気になるところです。皆さん全員が問題なく健やかにお過ごしいただいてるとは考えにくく大なり小なり再治療・新たな治療がなされているはずなのです。
過日も私共高橋歯科醫院から転院され他院での治療をされている方から電話がありました。内容は「高橋が被せた自費の冠のレントゲンで今通っている先生が根の薬の入り方が少ないので缶を外して再治療の必要があると言っている。被せた冠の治療費を返してもらえるか?」とのお電話でした。そもそも根の治療は当院ではなく薬の入り方が多少不十分でも症状もレントゲン上の炎症像もないことを説明の上冠を被せた事、そして必要性の低い加療のため根をさらに削るリスクを冒してまでする必要がない旨を説明させていただきその方はご納得さたようでした。おそらくは今通われている先生が症状が無いにもかかわらず根の薬(根充材)の不足を理由に自費の冠の再治療をご自身の経営のために提案したのではないかと思われます。まあ、説明が十分で患者さんが選んだならばそれも決して悪いことではありませんが、治療には常にメリット・デメリットが必ず付き纏いますのでその説明と必要性そして治療のエンドポイントの設定を患者さんと十分話し合って決めて欲しいと思います。
近年保険治療でもある程度のレベルが維持できるような新たな技術や材料が出てきています。勿論私ども歯科医療従事者側(歯科技工士、歯科衛生士、歯科医師、など)からすれば費用的に十二分な評価がされたとは言えませんがそれでも其の様な傾向は喜ばしいことだと思います。片や高い治療レベル(健康維持と審美、そして炎症と力からのリスクコントロール)を維持するための惜しみない努力と患者さんへの提案(患者さん其々の選択の自由)はこれからも必要だと思いますが、多くの場合歯科医療は「生きるか死ぬか」のレベルではなく生活の質の部分に関わる医療ですのでこれかもより一層皆さん一人一人のライフスタイルに寄り添いながら最善の努力をしていきたいと思います。
そして、残念ながら何かの理由で当院から離れられた患者さん方も其の様な治療等を引き続き受けられる様な歯科医療機関と巡り合えている事を心から願っております。よわい65歳を過ぎて何かと祈る機会が増えています。この先長きにわたって良い意味で祈れる生活が皆様共々この地で、この日本で、そしてこの地球で続きます様に。