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2020/03/15[院長コラム]三月を迎えて  日本の歯科事情と専門医制度について思う

  こんにちは

  三月を迎えすっかり暖かくなってきたと思っていた矢先、関東地方は雪模様です。まあ、東京で雪が降るということは冬型の気圧配置が崩れている証左なのでいずれにせよ昔より言われる「寒さ暑さも彼岸まで」なのでしょう。それにしても異常な暖冬でしたね。これが毎年となると異常でもなんでもなくなるのでしょうか、恐ろしい事です。

  恐ろしい事といえば、一月に武漢で発生したと言われる新型コロナウィルスによる感染症がつい先ごろWHOによってパンでミックスの宣言がありました。
 グローバリズムにのり世界中で蔓延し多くの死者の方も出ています。
 日本でも其の対応やそれに伴う自粛、人の移動制限による経済の落ち込みなど様々な問題が生じています。個人的にはすでに水際作戦や隔離といったレベルは過ぎ市中感染をしていると思います。一見健康な感染者や軽度の方々がコロナウィルスと自覚がないまま感染を広げていると思われます。過剰な心配や自粛さらにはパニックに陥らずに冷静にできる範囲の自衛的な予防(手洗いなど)をきちんと各自が行うことが最もこの時期大切なのではないでしょうか。もはやオリンピックの延期は避けられないでしょうしさらにはそれらによる不況のほうがよほどウィルスより心配です。
  現政権の無策、そして外国頼みのグローバリズム、さらに成長神話と成長の起爆剤麻薬の箱物行政の何重もの過ちの果てがこの有様です。

 さて、それはそれとして今月はトピックスでご紹介した日本(紹介文では対照にタイの様子が書かれていました)の歯科事情と専門医制度について少し補足と感想を書きたいと思います。
 さて、まずは紹介文に関してですが正しい部分と間違っている部分、そして解釈の異なる部分とがあります。
文中で述べられている「根の治療にラバーダム」が必ず必要なことや「顕微鏡」が有用なことは事実です。其のような治療を行うタイの専門医の技量を疑うわけではありません。ただ文中では其のような治療がタイでの平均的な歯科医療であり一方ラバーダムをせず顕微鏡を使用しない根の治療を行う日本の歯科医療レベルがとても低く飛行代を払ってでもタイで治療をしたほうがいいとの見解には誤解というより悪意を持った意見のようにさせ思われます。
 実際に私がタイの平均的な歯科医療レベルを知っているわけではありませんが、確実に言えることは文中の様な歯科医療はタイでの平均的な歯科医療ではなく商社マンや地元の富豪などを相手にする特別な歯科医師が行なっているはずです。さらにタイでの保険システム外でもあり自費治療です。タイでの物価を考えるならば日本人にとってはそれほどの高額な歯科治療費用にはならないでしょうが、それと日本での皆保険下での自己負担金を比べいかにも日本での歯科医療のレベルが低いというのはいかがでしょうか。
 日本でも自費のみの診療ですが、すばらしい歯内療法(根の治療)の専門医多くいらっしゃいます。そして、私を含めてですが、とても低い健康保険の診療報酬で献身的にラバーダムや顕微鏡を使用しながら治療に取り組んでいる歯科医師(専門医ではない)が多く居ることを皆さんに是非お伝えしたいと思います。

 さて、紹介文ではいかに専門医制度による専門医の治療が素晴らしいか、そして歯内療法専門医が根の治療ばかりをしているのだから当然根の治療が上手いはずだ。と述べられています。 確かに、専門医は根の治療なら根の治療ばかりを、歯周病の治療なら歯周廟の治療ばかりを行うので手慣れることは事実だと思います。しかし、考えてみてください。根の治療で歯科治療が完了するのでしょうか?歯周病の治療で歯科治療が終わりでしょうか?お口は根や歯茎はおろか歯1本で成り立って居るわけではありません。通常は28本の歯、そして歯並び、歯周組織、粘膜や筋肉さらには噛み合わせで一体となって機能して居るのです。
 さらに治療が完了した後のメインテナンスは誰が担当するのでしょうか?
 お口の包括的な診査と診断・さらにはそれら診断に基づいた治療計画なくして歯科治療は完了しません。それをばらばらに細分化してそれぞれを専門医で行うことが患者さんの求めて居る「健康と審美・機能」が得られるでしょうか?それぞれの細分化された各ステップの治療を確実に行う事は勿論なのですがそれらを有機的に結びつけ最終的な「口腔」という臓器としての機能を発揮させることの重要性と困難さはとても口では言い表せません。
 現在、日本でも歯科という小さな医科の一分野をさらにバラバラに細分化し専門医制度に置き換えようという動きが始まっており遅から早かれ専門医制度が始動すると思われますが、私は各々の領域を細分化することには反対です。
 GP(general practice)・一般歯科医師としての誇りと矜持を持ってこれからも皆様の健康に寄与していきたいと思っています。