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2012/10/10[トピックス]医師の大増加で「失業も」原医政局長講演

日本医師会主催の第56回社会保険指導者講習会が10月5日に都内で開催され、厚生労働省の原徳壽・医政局長と宇都宮啓・保険局医療課長が、日本の医療の現状と課題などについて講演した。共に「これからは病気が圧倒的に増える」(原氏)と強調した上で、在宅医療や長期療養などのために、医療機関外での多様な医療の提供体制を整える重要性を訴えた。
 原氏は、前提として、団塊の世代の高齢化に加え「病気は、50歳から60歳で2倍、60歳から70歳で2倍、70歳から80歳で2倍強となる」として、高齢者数の増加以上に病気が増えることを指摘した。
厚生労働省の原徳壽医政局長は、「高齢化以上に病気の増加が進む」と強調した。
 医師の増加については、医学部の定員が2007年から2012年にかけて1366人増の8991人になったことを紹介。医師数は2009年時点で人口1000人当たり2.2人となっているとし、「もう少し増やさなくてはいけないが、それを医療の現場にどう使うかを、もう少し考えなくてはいけない」とした。医師数の大幅に増加については、「今の学生が60歳になったとき、日本の人口がどれくらい減っているのか考えると、将来医師は失業するのが分かる」と否定。出産や子育てで現場を離れた女性医師が戻れるような施策や、医療クラークや看護師との分業を進めることで対応する考えを示した。診療科別の医師の偏在については、2010年までのデータを挙げて、多くの診療科で増加傾向にあることを指摘したが、「現在の分布でいいのかは課題」という認識を示した。
 病床の増加については「病床規制の解除は、非現実的。建物は増やすことができても、働く人をどれくらい増やせるか」として否定的な見解。「従来の日本型の病院での医療だけでなく、集合住宅に対する医療提供など、病院や施設外での多様な医療の提供を考えなくてはいけない」と強調し、在宅医療や長期療養が必要な患者については「介護サービスとの連携が必要になってくる」と話した。「高機能の治療や患者の集約化をしないと、病気の増加に対応できない」とも指摘した。
 臨床研修制度については、「研修で大学の外に出た医師が戻らないのが問題」と発言。医局を離れた人のキャリア形成の重要性に触れた上で、医師の地域偏在解消を目的として都道府県に設置している「地域医療支援センター」を活用する考えを示し、現在20カ所のセンターを「来年増加させるように努力する」と述べ、整備を進めていく考えを示した。医療イノベーションの重要性も強調。「世界に発信できる日本製の優れた医薬品や医療機器を作ってもらう」と政策の狙いを話した。
地域包括ケアの重要性強調
 続いて講演した宇都宮氏は、医療における地域の役割を強調。 2010年の内閣府の調査を引用し、「介護を受けたい場所として、自宅かケア付き住宅を約6割の人が希望しているため、そのニーズに応えなくてはいけない」とした。
 その上で2010年に厚労省の地域包括ケア研究会の報告書で、「2025年に地域包括ケアシステムを構築するべき」としていることについて、「介護保険法の改正趣旨の中でも触れられ、社会保障と税一体改革にも盛り込まれた。これは国策。今回の診療報酬と介護報酬の同時改定はその一歩」と話した。地域包括ケアシステムは、おおむね30分以内の「日常生活域」で基本的な保健医療福祉にアクセスできることを目指すシステムで、「最初から専門職に頼るのでなく、本人もしくは家族、地域住民によるボランティアの力を見直して、できるだけそういうところで支え合う。そういう地域を作るべき」と話した。
 その上で参加者に向け、「地域包括ケアシステムを頭に入れつつ、患者住民のニーズがどこにあるのか、自分の施設はどういう役割を果たすのか、先取りするような気持ちで進めていただければ」と要望した。
 現在の医療保険制度については「世界に冠たる制度。維持しなくてはいけない」としたが、「病気の数が増えることで、社会保障給付は増えるが、保険料収入は増えない。不足分は税金で賄うが、結局は国民の負担」と制度維持の難しさを指摘した。また、7対1の入院基本料を算定する病院が多数を占めていることについては「今後の高齢化にふさわしいのかというのも課題」として、今後見直していく可能性を示唆した。
  m3.comより