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2009/07/09[院長コラム]梅雨のさなかの唾液(つば)のお話 その2
こんにちは
すっかり梅雨ですね。沖縄地方は梅雨明けとか?羨ましい限りです。東京ではあと二週間ぐらいの我慢でしょうか? 梅雨はモンスーン気候特有の季節です。これが、日本の美しい風土を育んでいます。春夏秋冬 僕はとてもこの國の湿った潤いのある風が好きです。(どっかのCMじゃありませんけど。笑)
さて、お口の中の潤いである唾液もとても大切な役割を持っています。ざっと上げてみましょう。
1.消化作用 2.軟化作用 3.粘膜の保護 4.緩衝作用 5.咀嚼の補助作用 6.溶媒作用 7.味覚の補助作用 8.洗浄作用 9.水分代謝の調節作用 10.抗菌作用 11.再石灰化
12.その他
順番に簡単に説明しましょう。
1.人間は食物を分解しそこからブドウ糖を摂取してエネルギー源としています。唾液に含まれるアミラーゼという酵素によってデンプンを加水分解し腸から吸収しやすい形にします。咬めば咬むほどいい味がする訳ですね。
2.ムチンによって食物を軟化し滑らかにして嚥下しやすい形状にします。
3.糖タンパクのムチンというは水分を多く含む分子構造をしており粘稠度が高い物質です。これにより粘膜が保護されます。
4.虫歯は虫歯菌の出す代謝産物である酸によって歯が溶ける状態を言います。例えば歯の最表層のエナメル質はph5.5以下で溶け出します。根の部分のセメント質はもっと中性に近いph6前後で溶けてしまうのです。その酸性の状態を唾は中和する役割を持っています。唾液中の重炭酸塩やリン酸塩、そして両性タンパク質のムチンなどによるものです。
5.食物を湿潤させ、噛み砕きやすくします。
6.食物中の味物質を溶解させます。
7.唾液中の亜鉛によって味覚が得られるのです。
8.唾液によって歯の表面や粘膜の表面に付いた細菌やプラーク(細菌のバイオフィルム)、食物の残りかすなどをきれいに洗い流す力があります。が、これは過信してはいけません。
9.全身が脱水状態に陥ると、唾液の分泌が抑制され、水分代謝の調整があ行われます。
10.ご存知の様にお口の中には沢山の細菌が繁殖しています。(唾液1グラム中に10の11乗個 想像できない〜!)一方、唾液中には抗菌作用を持つ部室も含まれているのです。細菌が増殖するのに必要な第二鉄イオンと結合して細菌の成長を阻害するラクトフェリン。細菌の細胞壁に作用し分解してしまうリゾチームなどです。「傷口を舐める。」のは、理にかなっている訳です。
11.虫歯になった歯の表面はエナメル質という組織のハイドロキシ・アパタイトが溶けてなくなったしまった状態です。しかし初期の虫歯の状態であれば一度溶けたハイドロキシ・アパタイトが唾液から補充され再石灰化し自然に修復(治る)されるのです。
12.その他、胃酸の逆流を押さえる働きがあったり、人間以外の話では血糖レベルを抑制する働きがあったりと、日頃意識が行きにくい「唾液」ではありますが、身体の真ん中の管(口腔から肛門まで続く消化管)の入り口で様々な働きを担っています。
ひごろ、目立たない「唾液」ですが、ふと考えると、諺の中に「つば」を交えたものが結構多いのに気付きませんか?これって、昔のヒトは以外に「つば 唾液」の大切さを感づいていた印なのではないでしょうか。とかく、厄介扱いされがちかもしれませんが、「唾液」が出ないととても辛いのは以前このコラムに書かせてもらいました。私に限らず、「唾液」の分泌障害が現れるシェーグレン症候群の患者様が多くいらっしゃいますし、他の要因で唾液の分泌が少なく歯周病や虫歯に悩んでいらっしゃる方を多くお見かけします。これからも更なる研究と取り組みによって鬱陶しい「お湿り」ではなく、快適な「お湿り ・唾液」になるといいですね。