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2023/08/03[院長コラム]勝ち組?負け組??
こんにちは
「勝ち組、負け組」という言葉を知っていますよね。
嫌な言葉ですね。
今年の初めにおおよそ40年ぶりぐらいに中学校剣道部の親友3人と食事をしました。私歯科医師、現役中学校国語教師、地方銀行退社後会社経理担当、有名老舗問屋社主閉店後他店勤務 の4名です。有名老舗問屋社主閉店後他店勤務の彼の奥様が「今日はどんな人たちと会うの?」と、で、「勝ち組ね。」との言葉だったようです。歯科医師、現役中学校国語教師、地方銀行退社後会社経理担当、は「勝ち組」でしょうか?おそらくは私たちが社会的・経済的な成功者だとかいったことではなく、ついこの間までは知る人ぞ知る老舗問屋社長夫人であったのにコロナ や様々な要因からお店をたたまざる得なくなり従業員に退職金などの工面をしてほとんど手持ちがない状態になってしまった上にご両親の介護の時期が重なったりとのご自身の状況の中での心情吐露だったのでしょう。その状況は同情も理解もできます。しかしながら人間をプラス・マイナスや白・黒のように二項対立で線引きをし分断する思考は賛成できませんし、その様な安易な語彙でラベリングするべきではないと思います。
また、よくお酒を一緒にする異業種の友人から「勝ち組だし。」と私は言われます。確かに着物を着たりブランド物の洋装をしたり少々経済的に成功したような出立をしているかもしれません。また、歯科医師という職種からステレオタイプに判断されていると思います。まあ、自院のHPのブログで書くようなことではありませんが、当院はいわゆる儲かっている歯科医院ではありません。設備やスタッフに対する研修等の経費にかなりの投資をしており、それらを貪欲に診療費で回収し富として蓄積している歯科医院ではありません。父の代からの建屋や地面があって成り立っている地域歯科医療です。その一方で自分自身で選べない氏素性を含めての「勝ち組」と言うのであれば、ある程度当てはまっているかもしれませんし日本国民の年収中央値から言えばかろうじて勝ち組と言えなくもありません。けれども、やはり「勝ち組」と言われていい気持ちはしません。
なぜでしょう。一般的には「勝ち、負けどちら?」と言われれば、「勝ち」が良いような気がしますよね。しかしそこには社会の中での人の有り様は正に多様であり、各々の有り様によって多面的に評価されるべきであるにもかかわらず。様々な価値観を否定・無視し経済と社会的地位という資本主義の物差しでのみの評価があり、さらにその物差しや評価にさえもグレーゾーンや移行帯の部分があるのにもかかわらず「+、−」と言う2極分化という言葉の暴力とういうべき極まりない寄るすべもない言い方に暗い感情を臭いとってしまうためかもしれません。翻って言うならその感情とは私自身であり、私の暗部つまり資本主義的な発想を否としつつそうでありえる自分自身の根っこを抱えている自己矛盾に反応しているのでしょう。
そもそもの「勝ち組・負け組」という言葉の意味することは今とだいぶ違っていたようです。第二次世界大戦終結後もブラジルを主とした南米諸国やハワイ州などの日系人社会や外国で交流されていた日本人の中に敗戦という現実を受け入れられずに、「日本が連合国側に勝った」と信じていた人々を「勝ち組」、一方で敗戦の事実を認識し勝ち組の人たちを納得させようとした人たちを「負け組」と呼んでいたそうです。とすれば現代の「勝ち組」とは今や世界・地球規模で資本主義的発想や成長を前提としたシステムが立ち行かななくなった現実を受け入れられずに「新しい資本主義でさらなる成長を」と叫んでいる人たちであり、「負け組」とは資本主義の限界を認識し世界・地球規模の破壊を押しとどめようと声をあげている人たちという事になります。
であれば、あえて資本主義的な根を抱えている自己矛盾に向き合いながら「負け組」ならんとする自分自身でありたいものです。